涙という字はいらない。

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『ひとがた流し』 北村 薫 著(1600円/朝日新聞社) 

趣味に「読書」と書くには書くが、たくさん読んでいるかというとそうでもない。
あえて云うなら「読むのが好き」といったほうがいいかもしれない。
小説も好きだが、コラムを集めた本も好きだ。エッセイじゃあないの。

北村薫さんは割と読んでいる作家で、特に「私と円紫さん」シリーズは大好きで、中でも 『六の宮の姫君』はお気に入りの一冊だ。
最近では、『ひとがた流し』 を読んだ。
40代になる女性3人を淡々と描いている。本当に静かに。
社会での立場と仕事の充実感、それゆえの苦しみ。
女性もある程度の年齢になると、人それぞれに抱える荷物が増え、そして、その荷物をだんだんと整理しようかと思うようになる。
生きている以上、誰にでも訪れることがある。
人はひとりで生きていかなくてはならないのだが、ひとりぼっちでは生きていけない。
友人知人というものは数ではない。
自分が知っているひとが、自分を知っているひとが何人いようと、お互いにこころのなかで支えあえるひとがいなければ寂しいものだ。

これを読んでいるときに、自分の中の“こころの一冊”ともいえる本を思い出した。(その本についてはまた今度‥)
時代は変わっても女性が抱える喜怒哀楽はなんら変わりがない。
変わりようがないのだ。
そして、もう一冊、『永い眠りにつく前に』という本も思い出した。
私はけっして、いわゆるフェミニストではない。
正直いうと、それを大声で発している女性たちが少々苦手だ。
この『ひとがた流し』には、「涙」も「愛」も「友情」も出てこない。言葉としては。
なのに、読みながら、そして読んだあと、涙がポロポロ溢れてくるのは私が女だからだと思う。

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読書でもなんでも、『数』でははかることができないものがある。
いい本に出逢うといつも感じることがある。
あぁ、私は 『読むよろこび』 を知ってしまったんだなぁ、と。

前も云ったことがあるのだが、昔、会社を辞めるときに、いろんな人たちがメッセージを書いたアルバムのようなものを貰った。
その中の1ページに、ある上司からのメッセージがあり最後に 「Many Books!」と書いてあった。
そのときには、さして気にもせずこころの隅っこにあった「Many Books!」が、いい本に出逢うたんびにズシンとこころの奥から響くようになった。
そして、「そうかぁ、そういうことだったんだぁ」とちょっぴり胸がホックリするのだった。

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