« おまえは何なんだ?! | メイン | Amore della pasta! »

2007年5月21日 (月曜日)

あなたに会えてよかった。

Photo_2

まだ22歳くらいのころ、読みたくて仕方がない本があった。
雑誌などで、自分の気になる何人かのひとがオススメの本として紹介しているのを見て、読みたくなったのだが、書店で出版社に問い合わせても、そのときすでに在庫なし、絶版状態だった。
発刊されて2年くらいだったと思うのだが、鹿児島市内の書店はすべて在庫なし。
私は美術館めぐりが好きで、旅行の目的もそれが主だったことが多かった。
そんなときに知らない街の書店に入り、必ずその本を探した。
やはり、それでも見つからず、そういうことを繰り返しているうちに10年くらい経ったと思う。

ある日、その作家の作品が全集として発刊されるという記事を見つけた。
その4巻目が、私が読みたくて読みたくて仕方なかった作品だった。
発行される月を楽しみにして、予約してやっと手にいれることができた。
でも、すぐには読むことはできなかった。
読んだのは、手に入れてから半年くらい経ってからだと思う。

Photo_3
『 しずかにわたすこがねのゆびわ 』 干刈あがた(河出書房新社/2990円)

1960年代の中ごろから約15年間の数名の女たちが社会の差別や矛盾のなかでもがき、傷つきながらも自分の人生を切り開いていこうとする姿を真摯なまなざしで書かれた、やさしくて苦い作品。
時代設定や書かれたのが一昔前なのでセリフや女たちの意識が多少は古めかしく感じることもある。
特に結婚・離婚に関しては、当時とはだいぶ変わってきているだろう。
それでも、根本的なこと、女の本質は変わりがないようにも思える。

誰にでも、いつか、苦しみの指輪が回ってくる。
それでも生活は続く。人生はそう簡単に終わることなどできないのだ。
しずかに痛いくらいの孤独さと向かいながら、誠実に生きることができるだろうか、と考える。
優しさと厳しさのバランスをとりながら、時代に女として立ち会うということ。
自分自身が裂けそうになることもあるだろう。
そんなときに、そっと差し出してくれた、なにか明るく照らしてくれる目には見えないもの。

干刈あがたさんがおっしゃってらしたことがある。

  「どこかのひとりの女性の抱えている問題は
    世の中の女性すべての問題なのだ。」

私がこの『しずかにわたすこがねのゆびわ』を初めて読んだのは確か34歳か35歳のとき。
読みたい、と思ってから12~3年経っていた。
しかし、それだけの年月が必要だったのだ、と思わずにはいられなかった。
きっと、どこかでだれかが、「まだだよ、まだまだ」と云っていたのだと思う。
それでも、この本を読んだ8歳年上のお姉さんには「まだまだ早い」と云われたのだが。
そのときの面映い気分はわかるだろうか。

Photo_4

干刈あがたさんがこの本を最初に出したのは1986年頃。
そして、1992年に49歳の若さで亡くなった。
数年前に全集が発刊されたがすぐ品切れ状態になり再版は未定で、今も本が手に入りにくい作家だ。
やっと手に入れた数冊の本は私にとっては宝物。
初期の作品に『樹下の家族』という作品がある。
永瀬清子さんの『木陰の人』という詩を読んで感銘を受け、対句として『樹下の家族』を書いたそうだ。
私は『樹下の家族』も未だ読んでいないのだが、その永瀬清子さんの『木陰の人』という詩も読んだことがなかった。
永瀬清子さんは『あけがたにくる人よ』などを紡ぎだされた素晴らしい詩人だ。

ひとつの小さな円だと思っていたものが大きくつながった円になっていたことに気づくことがある。
特別なひとは出てこない。いわゆる面白い話でもない。
どこでもいる誰かのための作品だと思う。
でも、自信を持っていえる。
この作家に出会えたことは私にとっては幸せなことだ。

2

コメント

でさあ、ジョー・トークのあとにこんなステキでまじめトークってずるくな~い?? でも、ワタシは干刈あがたさんを今日の今日まで全く知らなかったんだけど、知らなかったことがホント残念って思ってしまいましたよ。 図書館とかにあるかな~。 だけど今、悲しいかな私の読書欲がどっか行っちゃってるのよねー。早く復活しないかな~。

出逢った頃にあなたからこの本のことを聞いてから、こっちの古本屋を何軒か探して、実は見つけていたんだ。
でもね、そのとき、買ってあげることはあなたがが望んでいることではないと思った。
「見つけたいの」と言っていた少し嬉しそうな顔は覚えていたからね。
手に入れてもすぐに読むことが出来ないと言っていたあなたが、やっと読むことが出来、それまで広げていたページをパタンと閉じたときにどこかで流した涙は私にも見えたような気がした。
そういう一冊、人、物事に出逢わなくても充分に生きていくことはできるだろうけど、きっと何かの糧になると思う。
私、そして私達があなたに出逢えたことも幸せな出来事です。
そんな気持ちを思い返すことができました。
菊ちゃん、ありがとう。

あーあーあー、誰かと思ったら、そういうことねー。
菊ちゃんがどうしても書きたかったいくつかのこと。
同意や共感といったものを求めているんじゃない、一種の「伝えたいこと」なんだろうなー。
どうしようもなく真面目に語りたいことがある。
それがあるから立ってられるんだよ。
ページの一枚一枚が女性たちの心の襞のような一冊、と先輩に言われたらさー、俺には無理じゃんと思っちゃったんだよなー。
今週末、借りて読むよー。
女性たちの心の襞はわかんなくてもいーんだけどさー、菊ちゃんの心の襞は・・・。
さよならさえ上手に言えなかったー、あなたの愛に答えられず逃げてごめんね、か。
菊ちゃんから貰った謎のラブソング集を聴いちゃってるんだよなー。
いい夢見ようかなー。
おやすみ、ハニー。

*comaちゃん*
これは、少し前に書いて下書き保存していて、どうしても少しワンクッション置かないと
公開できなくって、ジョーのあとになったの~。
干刈(ひかり)あがたさんは、映画化された『ウホッホ探検隊』が一番有名なのかなぁ。
読書の神様が降りてきたら、いつでも云って~。
貸すよ~ん(〃⌒ー⌒)/

高校生の頃「オレンジページ」をずっと買っていて、干刈あがたさんの「ものはものにしてものにあらず物語」と言うタイトルの短編連載があったのを覚えています。
子供だから、まだまだわからないニュアンスが多かったけど、今ならまた違った視点で読めるのかな、と思います。

“もとちゃん”の「同意や共感を求めているんじゃない」「どうしようもなく真面目に語りたいこと」という言葉に、菊ちゃんの作るもの・描くもののの美しさはそこに端を発しているんだなと感じ入った次第です。
やっぱり菊ちゃんは素敵!素敵という言葉が甘ったるく感じられるかもしれないけれど、それでも素敵!

菊ちゃん、こんばんわ。元気?
もとちゃん、いつになくいいこと言ってるなぁ。もしかして本気か。
こんなことじゃ、飯も食えないし家賃も年金も払えないのはわかっているんだよね。
だけど、心の糧は必要だよなぁ。
それで、あなたは君で、私は僕なわけね。そうかそうか。
今度会ったときに、代わりに抱きついてみよう。
キョンキョンかぁ、好きだったなぁ。
菊ちゃんのパパ曰く、ちょんちょんだね。

*K.Tさん*
me,tooどす~。meatじゃあないの。肉じゃん(>_<。)ノ
ばっかだなぁ、と思ってるでしょ?(o^_^o)ヘヘッ
実はHさんから聞いて知っていたの。
「そこまで考えずにさっさとあげちゃえばいいのにさぁ~」と笑いながら教えてくれたよ~ん。
こちらこそ、いつも温かく見守っていてくれてありがと~(*_ _)ペコリ

*もとちゃん*
いつになく、ちゃんとしたコメントを‥(^_^;)
いや、そうじゃなくって、そういうふうに感じ入ってもらえて、
ちょっと照れちゃうワン、なのf(*・o・*)ポリポリ
週末、借りて読むんだぁ~。
それにしても先輩、クールな外見からは想像できないことを時々おっしゃるのねん。
そこがいい、ということで~(o^_^o)

*麦の花さん*
素敵、って云われちゃって、ポリポリ全開です~~f(^ー^;
でも、本当の私を知らないから~。後悔(?)しますよ~~。
ふふふ~(^u^)
干刈あがたさんの本は買って未だ読んでいないのもあるのです。
お楽しみはこれから、です♪

*家具屋さん*
ちょんちょん!!覚えててくれて嬉しいですよ~ん(>_<。)ノ
生活の糧と心の糧かぁ~。バランスとれてないなぁと思います。
それよりも、そうなの?そうなのかぁ~。
お願いしますm(__)m

初めてお邪魔しました。ほんわかして居心地の良いサイトですね。時々寄り道させていただきます。

いときんさん、見に来てくださってありがとうございます(*_ _)ペコリ
寄り道、帰り道、一本道、またいらしてくださいね(〃⌒ー⌒)/゛

この記事へのコメントは終了しました。

フォトアルバム

DAISY0529DAISY

  • Instagram
    時々、アップしています。よかったら見てね。

*Handmade*

  • Happy Daisy * Handmade
    過去に作ったモノを集めて紹介しています。 見てみてネ。       

本棚 (時々増えています)

  • Daisy Books
    少しづつ置いています。覗いてみてネ。

映画の記録ノォト

  • BLUE MOON
    観た映画を忘れちゃう前にメモしておこう、と思っていたのにすでに忘れています‥。

どこから?

Powered by Six Apart