鹿児島はずっと雨が続いていて、梅雨が終わる日が来るのだろうか?とさえ思うくらいのころ、母と私は名古屋へ出発した。
南のほうからは台風4号の足音を聞きながら‥。
飛行機が鹿児島を飛び立つときは、小雨まじりの天気だった。
それが、雲の上にくるといい天気だったのだ~!
雲の上を散歩なの
父が亡くなって1年もしないうちに仲良しだったおじちゃんも亡くなった。
そのふたりが仲良く雲の上で釣り糸を垂らしているんじゃないか、とフト頭のなかをよぎった。
現実にはありえないことさえ、手が届くところで起きるのではないかという錯覚みたいなものを感じながら、「パパ、楽しい旅になりますように見守っていてね」と雲のどこかにいる父にお願いした。
陽が落ちたばかりの中部国際空港【セントレア】に着いたら、叔父(名古屋の叔母のダンナさん)が迎えに来ていた。
着いてまず感じたことは「あ、涼しい」ということだった。
そして、叔父の車に乗って、ビックリしたのがコレ。
昼間撮影
バックミラーにおびただしい数の飾り‥( ̄□ ̄;) !
だ・だ・だいじょうぶなのかっっ?!
叔父の車で流れる音楽はいつも演歌。
しかも、そのとき練習中の曲がエンドレス~(ノ ̄━ ̄)ノ(ノ ̄━ ̄)ノ(ノ ̄━ ̄)ノ♪
セントレアから叔母の家までの1時間以上の間、同じ曲を聴きながらも疲れすぎていた私はぐっすり寝た。
名古屋駅前より
次の日、早朝に私は叔母の家を出発した。
母は叔父叔母と一緒に次の日に徳島の鳴門市に行くのだが、私はもちろ~ん別行動で、長野の諏訪湖周辺の美術館巡りをするのじゃ~~♪( ̄▽ ̄)ノ″
以前から行ってみたい美術館(童画館)があって、地理的に鹿児島からだと名古屋か東京に行ったついでじゃないと長野はちょっと無理なので、今回行ってみることにしたのだ。
はじめは、東京に行って『コルビュジェ展』が観た~い!と思っていたのだが、コルビュジェは10年くらい前に一度回顧展を観ているし、連休の多いときはイヤだし、他にも行くところもあったのでやめた。
コルビュジェだけ観て、長野へ行こうかなぁ、とか考えたのだが、そうせずに正解だったのだ。
なにしろ台風が下からやってきているのだ~。
ワイドビュー特急しなの
8時ちょうどの、しなの3号でぇ~、私は私はあなたから旅立ちます~♪
ひつまぶし巻きよ~ん
車内で名古屋駅で買った、『ひつまぶし巻き』を食べた。
これがあなた、美味しかったのだ~ヾ(@⌒ー⌒@)ノ
ひつまぶしを食べるように、最初はそのままで、次は薬味(わさびなど)をつけて、最後はお茶漬けにして、ということで、わさびやお抹茶の粉までついていた。
でも車内で入れ物がないので、お茶漬けは無理で、わさびまで~。
塩尻で
乗り換えるのだ
正直いうと、別に特急あずさ号に乗らなくても、各駅停車でもよかったのだが、切符を買うときに何かの手違いで乗ることに‥。
目的の岡谷駅までは特急に乗っても各駅停車に乗っても、さほどかかる時間に差がないのだ。
でも、いろんな列車に乗られていいかなぁ~、っと。
以前は、主に西日本なのだが、いろんな列車に乗って、あちこちの美術館巡りをした。
NHK・BSで放映されていた関口知宏の列車の旅を見ていると、乗ったことのある路線が出てくるので嬉しくなるものだった。
岡谷駅に着いたワン!
駅から15分くらいの
イルフ童画館へ
コレって金平糖かな?それとも、モヤっとボール?
イルフ童画館は、大正から昭和にかけて、『コドモノクニ』や『キンダーブック』といった児童向け雑誌の挿絵などで活躍していた、武井武雄の作品を紹介し、それと供に「童画の世界」を広く発信している日本童画美術館。
私はもちろん、リアルタイムで武井武雄の作品に出会ったわけではなく、絵本よりも漫画で育った世代なので、大人になってから知った作家なのだ。
岡本帰一や初山滋といった作家と同じように、「なんだか懐かしく、そしていとおしいカンジ」で気になっていたのだが、特に刊本を知ってから、ぜひ死ぬまでに一度、ここイルフ童画館に行ってみたかったのだ。
エレベーターや階段のモビール、そして館内になにげなく置いてある椅子やテーブルまで、武井武雄のイメージを損なわない配置だった。
このモビールは持って帰りたいくらいで、この小さいサイズが売っていたらいいのに、と思った。
そして、刊本コーナーへ!
『本の宝石』と云われる造本芸術の世界なのだ。
観ていて背中を電気がビビビッと走るようなカンジや胸がプワ~ッと熱くなってくるカンジで、本当にフラ~と眩暈を感じたくらいだ。
さらにその本たちを保管する箱というのがいくつもあって、それがまた素晴らしいのだ。
刊本のお部屋であたし、ちょっと目頭が厚くなって、いつまでも観ていたいと思った。
以前、静岡にある『芹沢蛙介美術館』で刊本を観たときに、涙が溢れてしまったことがあったのだが、今回はそれ以上の打ち震える感動だったような気がする。
本当に来てよかったよぉぉぉ~と。
ラムラム王が案内するコーナーもある
トムズボックスから復刊された本たち
ハツメイハッチャン
ミュージアム・ショップでハガキや冊子を買った。
上の写真のは、戦前の新聞に掲載されていた四コマ漫画をまとめて復刊されたシリーズ。
東京・吉祥寺にある『トムズボックス』から発刊されたこのシリーズはどうしても持って帰りたかった。
とってもキュートな絵なのよ~ん。グリグリしたくなるくらい。
他の本は重たそうだったので、HPからの通販でこ後日取り寄せようかなぁと思う。
喫茶室にて
イルフ童画館がある岡谷市のすぐ近くにあるのが諏訪湖だ。
諏訪湖周辺は美術館が点在していて、いい機会なので、夕方、旅館に行くまでの道程で何箇所か巡ってみることにした。
ハーモ美術館
アンリ・ルソーと素朴派の画家たちのコレクションの美術館。
中に入ると、面白い展示のしかたで楽しかった。
お金持ちの大きなお家に来て絵をみているカンジ。
2階でいったん外に出るのだ
2階の通路から見た諏訪湖
北澤美術館
ルネ・ラリック、エミール・ガレ、ドーム兄弟、といったアールヌーボーからアールデコのフランス近代ガラス工芸の、世界的にも屈指のコレクションを誇る美術館。
私は、ガレもラリックもそれぞれ大きな展覧会を見たことがあるので、それほど感動するかなぁと、ちょっぴり思いつつ見始めたのだが、そんなことは忘れてしまうくらい素敵な作品たちだった。
有名な「ひとよだけ」もさることながら、昆虫をモチーフにした作品がとっても好きだった。
展示室内はフラッシュをたかなければ撮影OKなのだが、誰も撮影しておらず、ものすごーーーく勇気を振り絞ってお気に入りのを一枚だけ撮った。
ウットリ (*^_^*)
展示室のガラス作品はガラスの持った温かさがあるものが多く、説明してくれる学芸員のお姉さんも優しかったのだが、入口受付やショップのお姉さんたちは、揃いも揃ってガラスの持った冷たさを再現しているかのようなのが気になった。
世の中には「ひとに優しくしたら損!」と思っているんじゃあないか?と感じられるひとがたま~にいるが、まさしく、そんな印象だった。
諏訪湖周辺の美術館のなかではダンドツの入場者があると思われる美術館だと思うのだが、もったいないことだ。
っと、いっても、けっこう美術館って受付が冷たい応対のところが少なくなく、以前、働いていたころは、よその美術館でそういうことを感じるたんびに「自分も気をつけなくちゃ」と思ったものだった。
美術館に限らず、どんな場合でもそうだよねぇ、と感じながら、すぐ近くにある美術館へテクテク。
サンリツ服部美術館
ここでは、ちょうど『よみがえる源氏物語絵巻~平成復元絵巻のすべて』展が開催されていた。
NHKの特集で何度か見ていたので、ラッキー☆と思った。
国宝『源氏物語絵巻』のデジタル写真と、平成復元模写、そして江戸から現代までの模写もあわせて展示してあり、平成とその前の復元模写の違いもよくわかり、なかなか興味深かった。
それよりも私が感動したのは、復元模写とは別に九百年のときをえた国宝の今の状態をそのまま模写する、という作業もあるということだ。
褪色や剥離もそのまま模写しているのだ。
こちらもかなりの根気のいる仕事だと思う。
思いがけずいい展覧会が見られて好かった。
スワンバスに乗るのだ
鹿児島は最高気温32度、最低気温も25度、という状態で旅に出たため、私はノースリーブだった。
母が「長野は思ったよりも寒いよ」と云っていたので、薄いカーディガンはバッグのなかに入っていたのだが、鹿児島ほど冷房がガンガン効いていなかったので着ずにいたのだが、さすがに夕方になると「寒いかも」と思っていた。
そんなとき、旅館へ行くためにバス停で待っていたら、地元のおばちゃんが自転車を停めて私に云った。
「暑いの?」
なので、「いえ。寒いのでカーディガンを着ようと思って~」と云ってバッグから取り出して羽織ったら、おばちゃんは安心したらしく、
「よかった。暑いのかと思って」と云って、自転車で去って行った。
そうなのだ。ここ諏訪湖周辺はこの時期の最高気温は22~23度。
とぉ~っても涼しいのだ。高原が近いので空気もサラサラ~。
本気で「夏はやっぱり避暑地で過ごしたい」と思ったくらい。
ラルバ諏訪湖
今夜のお宿の『ラルバ諏訪湖』に着いた。
全部で8部屋の小さな温泉旅館。
とってもアットホームな雰囲気でお食事も美味しくて、しかも安いのだ。
一泊二食で6500円くらい。
諏訪湖周辺は温泉地でもあるので、どこもたいがいカケ流しの温泉だ。
周りには立派な旅館やホテルがあるのだが、調べていて「ここだ!」と、ビビビッときたのだ。
それは間違いではなかったと思う。
すべては「ひとなり」なのだ。
きっとリピーターも多いハズ。
私もまた諏訪湖に来ることがあったら、ここに泊まりたいと思う。
夕食までの間に少しだけ湖畔を散歩した。
足こぎスワンボート
袋をかぶった「かりん」
湖畔沿いに黄色い袋がたくさん付いた木が植えてあるのだが、これは「かりん」で、諏訪市の花だそうだ。
諏訪湖も昔と比べるとかなり水質が悪くなっているそうだ。
それをキレイな湖に戻そうと頑張っていると何かでみた。
鴨の親子
気になる「ボ~ト」の文字
次の日は、台風が近づいていることもあり、早めに名古屋へ帰ることにした。
スワンバスに乗って5分のところにある美術館へ。
原田泰治美術館
開催中の展覧会
特に原田泰治に興味があったわけでもないのだが、見てみると案外面白かった。
台風が近づいていたのだが、ちょうど星野富弘の展示があったのと、雨が降っていた、ということもあり、お客さんが割りと多かった。
見ていて思ったのは、こんなこと云うのはひじょうに申し訳ないのだが、相田みつをとは違うなぁ、ということ。
もちろん、星野富弘のほうがうんといい。
それでも、私は旅の途中じゃなかったら、こういう美術館も展覧会もなかなか見ることはなかったと思うのだが‥。
館内全体に丁寧さが感じられる美術館だった。
八ヶ岳プリン
カフェは諏訪湖が一望できるのだが、あいにくの雨で湖と空がつながった状態。
美味しそうなパンが売っていて、帰りの車内で食べるパンを少し買った。
岡谷駅前のマンホールのふた
スワンバスに乗って岡谷駅に向かった。
諏訪市から岡谷市に入ると小さい道をバスが通る。
その町並みというか家々がなんとも趣きがあって好かった。
古い家がそのまま、というだけではなく、新しく建てたであろう家もイマドキの家でなく、昔のように作ってある家が多いように思えた。
私の住んでいる鹿児島市よりも小さな街なのだが、何か「大切にしているもの」を家ひとつひとつから感じられたのだ。
なんだかとっても羨ましかった。
駅前のタイルいろいろ
そういえば、信州そばを食べていない、ということに気づいた私は駅近くの蕎麦屋で、ざるソバを食べた。
シコシコしていて美味しかったよ~ん。
でも、ちょっとつゆが濃くて塩っぱかった。
私は鹿児島の甘いしょうゆに慣れているのだ。トホホ‥(^_^;)
今度は各駅停車に乗って塩尻まで行き、特急しなのに乗り換えて名古屋へ帰った。
その日の夜から次の日の夜までは叔母の家には私ひとりなので、台風にも備えなくちゃ、ということで、名古屋駅にあるJRタカシマヤに寄って、デパ地階でお買い物なのじゃ~!
久しぶりに美術館巡りをして、湖と自然のなかで深呼吸してきて気持ちよくなった私なのだが、デパ地階に行くとなんだかね、ワクワクしちゃうの。
「帰ってきた~!」ってカンジ。てへっ f(。・_・。)
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